その動きは「仕事」か、それともただの「移動」か?現場の意識を劇的に変える教育のツボ

板金工場の現場を歩いていると、皆が忙しそうに動き回っているのに、なぜか予定通りに仕事が終わらない……そんなことはありませんか。 実は、その原因の多くは「移動」を「作業」だと勘違いしていることにあります。

今回は、生産性を本質的に高めるために不可欠な、「移動」と「作業」を見分けるための教育法について深掘りします。

1. 「付加価値」を生んでいる瞬間はいつか?

教育の第一歩は、すべての動作を「付加価値を生んでいるか、いないか」で仕分けすることです。

  • 作業(Work): 板をレーザーで切っている、ベンダーで曲げている、溶接をしている。つまり、製品の形が変わり、顧客が対価を払ってくれる「価値」が生まれる瞬間です。
  • 移動(Motion): 材料を取りに行く、完成品をパレットへ運ぶ、次の金型を棚まで探しに行く。これは、製品の価値を1ミリも高めていない、いわば「必要悪」な時間です。

社員一人ひとりに「今、自分のこの動きで製品の価値が上がったか?」を問いかけ続ける文化を作ることが重要です。

2. 「歩数」を測って、無駄を可視化する

概念を教えるだけでなく、実際に数字で見せるのが最も効果的です。 以前お話しした「段取り改善」とも深く関わります。

  • 1日の歩数を計測: 万歩計などを使い、ある工程の担当者が1日に何歩歩いているかを測ります。
  • 「歩く」=「コスト」と教える: 1歩歩くのに約1秒かかるとすると、1日2,000歩の無駄な移動があれば、それだけで30分以上の時間が失われています。 その時間があれば、あと何個曲げ加工ができたでしょうか。

3. 「手を動かすな、足を止めろ」という逆説

生産性が高いベテランほど、実はそれほど忙しそうに見えません。それは「足が止まっていて、手が常に価値を生んでいる」からです。

  • 足元にすべてを揃える: 移動をゼロにするために、必要な治具、金型、図面をすべて作業半径内に配置する。
  • 「忙しそう」を疑う: バタバタと走り回っている社員がいたら、それを「頑張っている」と評価するのではなく、「仕組みに不備がある」と捉え、リーダーが改善のチャンスとして拾い上げることが大切です。

まとめ:意識が変われば、景色が変わる

「移動」は「作業」ではない。このシンプルな事実を全社員が共有できたとき、現場の景色は一変します。 自分たちの動きからいかに無駄な「移動」を削り、純粋な「作業」の密度を上げるか。 その飽くなき追求が、多品種少量の現場でも高い利益率を叩き出す最強の工場を創り上げます。