「どんな注文でも断らず、職人の技術で形にする」。これは日本の板金工場の美徳であり、強力な武器でした。しかし、人手不足とコスト競争が加速する今、この「職人の技量に頼り切った多品種少量生産」は、経営上の大きなリスクになりつつあります。
属人化した現場はスケール(拡大)が難しく、社長が現場を離れられない原因にもなります。今回は、多品種少量の限界を認めつつ、その先にある「勝ちパターン」をどう作るべきか、具体的な戦略を考えます。
1. 「多品種少量」を「標準の組み合わせ」に変える
多品種少量が苦しいのは、毎回「一から考えて作っている」からです。 これを解決するのが、以前のコラムで解説した「設計標準」の導入です 。
- モジュール化の思考: 全く違う製品に見えても、実は「板厚」「曲げR」「接合方法」などは共通化できます 。
- メリット: 「特殊な形状」を「標準的な要素の組み合わせ」として捉え直すことで、現場の迷いが消え、以前お話しした「段取り時間の短縮」が劇的に進みます 。
2. 見積りと事務プロセスの「非対面・自動化」
多品種少量で最もコストがかかっているのは、実は「加工」ではなく、加工前の「見積り・図面展開・打ち合わせ」です。
- 事務工数の削減: 単価の低い仕事に、熟練者が時間をかけて見積りを書いていては利益は残りません。「見積りDX」を導入し、顧客自身がデータを投げるだけで概算が出る仕組みや、リピート注文が自動で流れる仕組みを構築します 。
- フロント業務の効率化: 事務の「多能工化」を進め、社長や工場のキーマンが「作業」に追われない環境を作ることが、次の戦略を練るための時間を生み出します 。
3. 「特定のニッチ領域」での圧倒的な専門化
「何でもできる」は、裏を返せば「これといった特徴がない」ことにもなり得ます。
- 得意領域の深掘り: 自社の設備と相性の良い「材質」「サイズ」「精度」に特化します。例えば「半導体製造装置向けの超高精度板金」や「医療機器向けのステンレス溶接」など。
- ブランド化: 領域を絞ることで、以前お話しした「ブランドを持つべき理由」に繋がります 。「この分野ならAKISIAが一番早いし正確だ」と顧客に認知されれば、相見積もりに巻き込まれない適正価格での受注が可能になります。
まとめ:仕組み化された多品種少量こそが「最強」
多品種少量というスタイルを捨てる必要はありません。変えるべきは「作り方」と「売り方」です。 職人の技を仕組み(標準)に落とし込み、デジタルで事務工数を削り、得意な領域で圧倒的な価値を出す 。この「仕組み化された多品種少量」こそが、これからの時代に小規模・中規模の板金工場が勝ち残るための唯一の解となります。











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