少子高齢化による人手不足の深刻化、電気自動車(EV)シフトに伴う部品構造の変化、そしてAI・自動化技術の劇的な進化。いま、精密板金業界は大きな転換期に立たされています。
10年後、生き残っているのはどのような工場でしょうか。今回は、板金業界の未来予測とともに、我々中小工場の経営者が今から備えておくべき戦略についてお話しします。
1. 「完全自動化」と「高度な手仕事」の二極化
未来の板金工場は、2つの極端な方向に分かれていくことが予想されます。
- 中ロット品の無人化: 以前のコラムでお話しした「曲げ加工の自動化」がさらに進み、定型的な製品はロボットが24時間体制で加工するようになります。ここでは「いかに機械を止めないか」という管理能力が勝敗を分けます。
- 超多品種・難加工の価値向上: 一方で、ロボットには不向きな試作開発や、複雑な溶接・組立を伴う製品は、依然として「人の知恵」を必要とします。こうした「職人にしかできない領域」の付加価値は、これまで以上に高まっていくでしょう。
2. 「AI・デジタル」が熟練工の代わりになる
AI技術は、単なる事務作業の効率化に留まりません。
- 見積りと展開の自動化: 過去の膨大なデータを学習したAIが、図面を取り込んだ瞬間に最適な工法を提案し、精度の高い見積りを算出します。
- 技術伝承の変革: ベテランの「カン・コツ」をセンサーで数値化し、AIが若手にリアルタイムで指導するような仕組みが普及します。これにより、以前お話しした「技能の見える化」が当たり前の世界になります。
3. 「サプライヤー」から「パートナー」への昇格
これからの板金工場は、単に「図面通りに作る」だけの存在では生き残れません。
- 設計段階からの参画: 以前のコラムで触れた「VA/VE」の能力を活かし、顧客の設計段階から入り込んで「最も作りやすく、低コストな形状」を提案できる工場が選ばれます。
- グローバルな競争と差別化: 単純な加工賃の安さでは海外勢に勝てません。「短納期」「多品種対応」「設計提案力」といった、日本の中小工場ならではの強みをブランド化することが不可欠です。
まとめ:未来は「今」の積み重ねで決まる
未来予測は、単なる予言ではありません。「こうなりたい」という意思を持って、今から何を準備するかを決めるための地図です。 新工場を建設し、DXを進め、人材を育てる。これまでのカテゴリーで議論してきたすべての取り組みは、10年後の未来で勝ち残るための伏線です。変化を恐れるのではなく、変化を先取りする経営。それこそが、精密板金業界の新しい夜明けを切り拓きます。










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