「なぜ、この形状で設計したのだろう?」 現場で図面を広げたとき、職人が首をかしげる。そんな光景はどこの板金工場でも珍しくありません。
優れた設計者は、製品の機能だけでなく、それが「どう加工されるか」までをイメージして図面を書きます。逆に、加工の基礎を知らないまま書かれた図面は、現場に余計な手間を強いるだけでなく、製品コストを無駄に跳ね上げてしまいます。今回は、設計者が押さえておくべき「板金加工の急所」についてお話しします。
1. 「曲げ」のメカニズムを理解しているか
板金設計の基本中の基本は「曲げ」です。しかし、理論上の寸法と実際の加工には必ず「伸び」や「最小曲げ半径」という制約が伴います。
- 無理な曲げ: 板厚に対して小さすぎる曲げRや、穴の近すぎる曲げは、割れや歪みの原因になります。
- 現場の苦労: 現場では、設計者の意図を汲み取りながら、金型を選び、展開寸法を計算し直しています。設計段階でこれらが考慮されていれば、段取り時間は劇的に短縮されます。
2. 「公差」の指定がコストを左右する
全ての寸法に厳しい公差を指定してはいませんか? もちろん、精密板金において精度は命ですが、不要な高精度指定は加工時間を増大させ、歩留まりを悪化させます。
- メリハリのある設計: 勘合部など重要な箇所には厳しく、そうでない箇所には標準的な公差を。
- 歩留まりの改善: 加工しやすい公差設定は、不良率を下げ、結果として会社に残る利益を最大化させます。
3. 「現場の常識」を設計にフィードバックする
以前、「設計と加工現場の“ズレ”をなくす方法」でも触れますが、最も効率的なのは「現場の声を聴く設計」です。
- 溶接を減らす工夫: 溶接は工数がかかり、歪みの修正も必要です。曲げだけで形状を作れないか、あるいは一体化できないか。
- 標準の活用: 自社の金型ラインナップや得意な工法(設計標準)を理解した設計は、最も低コストで高品質な製品を生み出します。
まとめ:図面は現場への「ラブレター」である
設計図面は、単なる情報の伝達手段ではありません。現場が迷いなく、スムーズに加工を進めるための「ガイド」です。 設計者が板金加工の基礎を深く理解することは、現場の属人化を防ぎ、工場全体の生産性を引き上げるための第一歩なのです。











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