「曲げの担当者が休むと、ラインが全て止まってしまう」 「特定の工程だけが忙しく、他の人は手が空いている」
板金加工の現場でよく見られる光景ですが、これは非常に大きな損失(機会損失)を生んでいます。この状況を打破し、変化に強い組織を作るための鍵が「多能工化」です。
一人が複数のスキルを持つことは、工場の生産性を上げるだけでなく、働く社員のキャリアにも大きなプラスになります。今回は、多能工化をスムーズに進めるためのポイントを解説します。
1. 「スキルの見える化」で現在地を把握する
多能工化を始める際、いきなり「明日から別の機械を覚えてくれ」と言っても現場は混乱します。まずは、誰がどの作業をどのレベルまでできるのかを一覧表(スキルマップ)にする必要があります。
- 見える化のメリット: 「レーザーはできるが、曲げは未経験」「溶接は補助ならできる」といった現在地を共有することで、次に誰が何を学ぶべきかが明確になります。
- ポイント: 以前お話しした「具体的な評価基準」をもとに、客観的にレベルを判定することが大切です。
2. 「教え合う文化」を仕組み化する
多能工化の最大の壁は、教える側の「自分の仕事が奪われる」「教えるのが面倒」という心理的な抵抗です。
- 改善策: 教わる側だけでなく、「教えた側」も高く評価する仕組みを取り入れます。
- 成功のコツ: 前回の「標準化(動画マニュアル等)」がここで活きてきます。標準があれば、教える側の負担が減り、誰でも一定のレベルまで短期間で習得できるようになります。
3. 多能工化を「社員のメリット」と直結させる
社員からすれば、新しいことを覚えるのは負担でもあります。「会社が楽をするための多能工化」ではなく、「社員の価値を高めるための多能工化」であることを伝えなければなりません。
- キャリアパスとの連動: 複数の工程ができるようになることで、給与ランクが上がる、あるいは将来的に「工程設計」や「工場長」への道が開けることを示します。
- 仕事の楽しさ: 毎日同じ作業を繰り返すよりも、多能工として広い視野で仕事に関わる方が、飽きが来ず、仕事の面白さ(従業員満足度)に繋がります。
まとめ:多能工化は「リスク管理」であり「攻めの戦略」
私自身の経験から言えるのは、多能工化が進んでいない現場は、常に誰かの欠勤や退職に怯える「守りの経営」になってしまうということです。
逆に、多能工化が進んでいる現場は、忙しい工程に柔軟に人員を配置できるため、残業が減り、利益率が上がります。そして何より、「標準化(土台)」があるからこそ、多能工化という「改善」が可能になるのです。
- スキルマップで工場の能力を可視化する
- 標準化を武器に、教え合うハードルを下げる
- 多能工化を社員のキャリアアップ(給与・成長)に繋げる
一歩ずつ「できること」を増やしていく。その積み重ねが、何が起きても揺るがない「強い板金工場」を作ります。










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