【導入:ビフォー】怒鳴り声が、現場の思考を停止させる
かつての板金現場では、ミスが起きると間髪入れずに怒号が飛ぶ光景が珍しくありませんでした。しかし、感情に任せて「怒る」ことは、指導ではありません。私はよくこう言います。**「人は怒るとバカになる」**と。 怒りに支配された脳は、冷静な判断ができなくなります。怒鳴られた側も恐怖で萎縮し、原因を考える余裕を失い、さらなるミスや隠蔽を招く。これこそが、工場における最大の「非生産的な動き」です。
【アクション】心の中で「7秒」を数える、というプロの技術
私が現場で徹底しているのは、怒りが湧いた瞬間に**「ゆっくりと7秒数える」**ことです。
- あえての沈黙: 7秒間、言葉を発しません。この一瞬の「沈黙」は、自分を冷静にさせるだけでなく、現場に「今は真剣な場面だ」という適度な緊張感と落ち着きを同時に与えます。
- 同じ「人間」としての対峙: 7秒経てば、脳は冷静さを取り戻します。そこで初めて、感情をぶつけるのではなく、相手の「行動」に焦点を当て、どうすれば良い方向に持っていけるかを説得する「叱る」という行為に移るのです。
【アフター】「社長も失敗するんだ」という安心感が生む、報告の文化
もう一つ、私が大切にしているのは、私自身の具体的な「失敗談」を部下に伝えることです。 「失敗は誰にでもある。実は私も昔、こんなとんでもないミスをしたことがあってね……」 完璧に見える上司が自分の失敗をさらけ出すことで、部下は「ミスをしても、ちゃんと報告して次に活かせばいいんだ」と安心します。
もちろん、これで明日からすべてが解決するほど組織は甘くありません。信頼関係の構築には、果てしない時間がかかります。しかし、「自分も人間、部下も同じ人間」だと考え、コツコツとこの姿勢を貫くこと。それが、何も隠さずに報告し合える、風通しの良い現場を作る唯一の道なのです。
【まとめ】「7秒の沈黙」が、30年後の職人を育てる
感情をコントロールすることは、最新鋭のベンダーを使いこなすことよりも難しいかもしれません。しかし、経営者が「7秒」を耐え、沈黙と失敗談を使いこなすことで、現場の空気は劇的に変わります。 「怒り」で人を動かす時代は終わりました。これからは「信頼」と「冷静な対話」が、板金現場の生産性を決める時代です。










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