その「こだわり」がコストを押し上げている?曲げR・板厚の統一化で実現する利益最大化のルール

精密板金加工の見積もりにおいて、意外と見落とされがちなのが「材料の種類」と「金型交換の回数」です。 設計者が良かれと思って製品ごとに最適な板厚やR(曲げ半径)を指定すると、実は現場では材料の載せ替えや金型の付け替えが頻発し、目に見えないコストが膨れ上がっています。今回は、製品性能を損なわず、製造コストを劇的に下げるための「統一化」の戦略について解説します。

1. 「板厚の集約」で材料の歩留まりと物流を変える

製品ごとに「1.0mm」「1.2mm」「1.5mm」と細かく板厚を使い分けてはいませんか?

  • 端材のロスを減らす: 板厚を統一(例えば1.2mmを1.5mmに集約)することで、同じ板から多くの部品をネスティング(配置)できるようになり、歩留まりが向上します。
  • 購買コストの削減: 種類を絞れば、一括購入による単価交渉が可能になり、在庫管理のスペースや手間も削減できます。少し厚い板を使うことで材料単価が上がったとしても、歩留まり向上と工数削減によるメリットの方が遥かに大きいケースがほとんどです。

2. 「曲げRの共通化」が段取り時間をゼロにする

板金加工において最も時間がかかるのが、ベンディングマシンの金型交換です。

  • 金型の付け替えをなくす: 部品ごとに異なる曲げRを指定すると、その都度機械を止めて金型を載せ替えなければなりません。社内で「標準R」を決め、設計段階でそれに合わせることで、金型交換なしの連続加工が可能になります。
  • 製品性能とのバランス: もちろん強度の観点から特定のRが必要な場合もありますが、多くの場合は「標準R」に置き換えても製品性能に影響はありません。設計者が現場の標準金型を知ることが、最強のコストダウンになります。

3. 「自社標準」を顧客へ逆提案する

この統一化は、自社内だけで完結させるものではありません。

  • Win-Winの提案: 顧客から来た図面に対し、「板厚をこちらに統一し、Rを当社の標準に変えさせていただければ、これだけコストを抑えられます」と提案します。
  • 設計の工数削減: 顧客側も、毎回一から板厚やRを検討するより、サプライヤー側の「標準」に合わせて設計する方が楽になります。結果として、顧客との関係性もより強固なものになります。

まとめ:標準化は「クリエイティブな経営判断」である

板厚やRをバラバラにするのは「自由」ですが、統一するのは「戦略」です。 製品性能という絶対条件を守りつつ、いかに製造ラインの「淀み」をなくす共通項を見つけ出せるか。この設計段階での一工夫が、人手不足の時代に「歩数を増やさず、利益を増やす」唯一の道となります。